2026年現在、各社から様々なAIサービスが提供されています。AIに「こういうゲームをつくりたい」と伝えると、コードの例や直し方のヒントを得られるようになりました。それだけではなく、Godotのプロジェクトそのものを直接更新し、ノードの作成やパラメータ設定、コーディングまでAIが自動的に実行することもできます。コードの生成やプロジェクトの初期構築は、これまで以上に自動化できるようになっています。
しかし、どのようなゲームにしたいのか、AIが生成したものが目的に合っているのか、実際に遊んで面白いのかを決めることまでは任せきりにできません。これからプログラミングやゲーム制作を始める中高生や保護者の方から、「AIがつくってくれるなら、自分で学ぶ必要はあるの?」という疑問が出ることもあるでしょう。
私たちは、AIが使える時代だからこそ、プログラミングとゲーム制作を学ぶ意味は大きいと考えています。大切なのは、ゲーム制作を通して、目的を考え、試し、結果を確かめ、よりよい方法を選ぶ思考力を身に付けることだと考えています。AIが出力した内容もうまく活用しながら、自分のアイデアを形にしていく力につなげたいですね。
AIに「何をつくるか」を任せるのか?
AIは、アイデアを形にする手助けをしてくれます。しかし、「どんなゲームなら遊ぶ人が楽しめるか」「キャラクターはどの速さで動くと気持ちよいか」「難しすぎないルールにするにはどうすればよいか」といった判断は、つくる人が行います。
もちろん、AIへすべてを任せても、短時間で遊べる形にしてくれることはあります。けれども、そのゲームを「自分は何を面白いと感じるのか」「誰にどんな体験を届けたいのか」というところから考え、個性のある作品へ育てていくには、つくる人自身の考えや判断が必要です。
ゲーム制作では、ゲームの目的や遊び方を自分で決めます。敵を避けるゲームにするのか、協力して進むゲームにするのか、得点を競うゲームにするのかによって、必要な仕組みも見せ方も変わってきます。AIを使うときにも、最初に自分の考えがあるからこそ、必要な助けを求められます。
ゲーム制作における生成AIをめぐる現状
海外のゲーム業界では、生成AIをめぐって慎重な意見や否定的な意見が多く聞かれます。GDC(Game Developers Conference:ゲーム開発者向けの国際的なカンファレンス)が2,300人以上のゲーム業界関係者を対象に行った2026年の調査では、生成AIが業界へ悪い影響を与えていると考える回答が52%でした。著作権や学習データの扱い、仕事や創作への影響、作品の品質や個性への心配などが背景にあります。
一方で、調査では36%が生成AIを仕事で使っていると回答しており、調べもの、発想の整理、コード補助、試作など、用途を限った活用も進んでいます。Steam(PCゲームの配信・販売プラットフォーム)では、プレイヤーに提供されるAI生成コンテンツを含むゲームについて、その実装を申告する仕組みになっています。大切なのは、AIを使ったかどうかだけで判断するのではなく、誰の権利を守るのか、どの作業を任せ、どこを人が判断するのかを考えることです。GDCの調査結果、SteamworksのAIコンテンツ申告についても参考になります。
出力されたコードを、確かめて直す力が必要
AIが提案したコードをそのまま貼り付けても、すべて思いどおりに動くとは限りません。使っているGodotのバージョンや、ノードの構成、ゲームのルールによって、調整が必要になることもあります。
もちろん、その都度AIへ細かな指示を出し、修正を頼むこともできます。ただ、小さな変更のたびにAIへ説明して修正させる方法が、いつも効率よく進められるとは限りません。意図が十分に伝わらなければ何度もやり取りが必要になったり、一部を直したことで別の部分が思いどおりに動かなくなったりすることもあります。
そのときに必要なのは、「このコードは何をしているのか」「どこが意図と違うのか」を確かめる力です。キャラクターを動かす、当たり判定を付ける、得点を表示するといった基本を自分でつくった経験があれば、AIの提案をただ受け取るのではなく、自分の作品に合わせて選び、直せるようになります。
よい質問を考えることも、プログラミングの力
AIを役立てるには、困っていることを言葉にして伝える必要があります。「動きません」とだけ伝えるよりも、「右キーを押すと動くが、左キーでは動かない」「敵に触れても得点が変わらない」のように、起きていることと期待していることを整理して伝えることが大切です。
このためには、ゲームを小さな仕組みに分けて考える力が必要です。入力、移動、当たり判定、得点表示といった要素を区別できれば、困っている場所も見つけやすくなります。これはAIへの質問だけでなく、先生や仲間に相談するときにも役立ちます。
さらに、自分の考えを相手に分かりやすく伝える力は、AIを使う場面に限らない大切なコミュニケーション力です。何を試したのか、何が期待と違ったのか、次はどうしたいのかを順番に説明できれば、先生や仲間からよりよい助言を受けやすくなります。複数人でゲームをつくるときにも、アイデアや役割を共有し、お互いの意図を確かめる力が欠かせません。
ゲーム制作では「正解」だけでは完成しない
プログラムが動くことと、ゲームとして楽しいことは同じではありません。敵の速さ、ジャンプの高さ、音のタイミング、説明の分かりやすさなどは、実際に遊んでみて初めて判断できます。ゲーム制作では、書いたコードの結果が、遊ぶ人の感覚や行動へすぐ表れることが特徴です。
たとえば、キャラクターを右へ動かす処理が正しく動いていても、移動速度を少し変えるだけで「軽快に走れる」「重くて反応が遅い」といった印象は大きく変わります。ジャンプの高さ、落ちる速さ、敵が出現するタイミング、得点が入る音なども同じです。数値としては小さな違いでも、遊んだときの手触りや心地よさ、つまりゲームの感覚的な質を左右します。
ゲームとして遊べる形にはなっていても、「いまいち思った感じではない」と感じることがあります。その正体を見極めることも、つくる人の大切な仕事です。キャラクターの動きが重いのか、敵が単調なのか、画面の情報が足りないのか、クリアしたときの達成感が弱いのか。違和感を具体的な言葉にして、パラメーターを一つずつ変えながら試すことで、改善する場所が見えてきます。
そこで役立つのがプレイテストです。自分だけで遊ぶのではなく、友だちや家族にも遊んでもらい、「どこで迷ったか」「どこが面白かったか」を聞きます。つくった人には当たり前の操作が伝わらないこともあり、その気付きから説明、難しさ、画面の見せ方を改善できます。
こうした体験は、画面や機能が正しく動くかを中心に考える一般的なWebプログラミング学習とは異なる、ゲーム制作ならではの学びです。AIは案を出したりコードを補ったりできますが、遊ぶ人が迷わないか、もう一度遊びたくなるか、そのゲームらしい手触りになっているかを最終的に判断するのは人です。ゲーム制作には、技術獲得だけでなく創造的な判断を重ねることで、多くの学びの機会があります。
AIを「答えを出す道具」ではなく、考える相手にする
教育の場では、AIを使わないこと自体を目標にする必要はありません。アイデアを整理する、エラーの意味を調べる、別の方法を比べるといった場面で、AIは心強い補助になります。
一方で、最初から答えをすべて任せてしまうと、「なぜ動いたのか」「次に何を変えればよいのか」を自分で考える機会が減ってしまいます。まずは小さな仕組みを自分でつくり、分からない部分をAIに相談し、試した結果をもとにもう一度考える。この往復が、AIを使いこなす力につながります。
教育者として大切にしたいこと
AIが身近になるほど、教える側には「答えを早く出すこと」よりも、「考えた過程を言葉にできるようにすること」が求められます。子どもがAIの出力を使ったときにも、「何をお願いしたの?」「どこを変えた?」「実行したらどうなった?」と振り返ることで、自分の学びとして残ります。
AIがない時代に戻ることはありません。だからこそ教育の場では、AIを使わせるか使わせないかだけではなく、AIをどのように活用し、自分で考える力や表現する力へつなげていくのかが問われています。便利な答えを受け取って終わりにするのではなく、目的に合っているかを確かめ、よりよくするための対話相手として使う経験が大切です。
ゲーム制作は、AIとの付き合い方を学ぶ題材としても相性がよい活動です。自分のアイデアを出発点に、AIの提案を試し、遊ぶ人の反応を見て改善する。この繰り返しを通して、道具を使いながらも自分で考え、判断し、表現する力を育てていけます。
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AIを含む道具を生かしながらゲーム制作を学ぶには、実際に小さな作品を完成させる経験が大切です。次は、キャラクターを動かす仕組みからゲーム制作を始めてみましょう。
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